泡沫のユメ

どこからでも読める金太郎飴みたいな短編小説書いていきます

小説

雨垂れ石井を穿つ

第一印象は特になし。 良いとも悪いともいえない、ごく普通な印象の人がいた。毎朝電車内で見かけるとはいえ、声を交わしたこともないのだからそう思うのは至極当然のことといえる。ただ、毎日のように会っていると愛着でも持ったのだろうか、なんとなく気に…

先生は神様です

ぼんやりとした意識の中で、誰かが私を呼ぶような声が聞こえた気がした。「…さん、浦田さん!」いったい誰の声だろう。そうやって耳をすませるうちに、全身の感覚がゆっくりと戻ってきた。どうやら私は横になっているらしい。うっすらと目を開けると、見知ら…

ミッション1、情報を集めろ

「立花先生」 「はい、なんでしょう」 「先生は好きな人いるんですか?」 「…質問が急ですね」 「…あ、ごめんなさい。見ず知らずの生徒に急にそんな質問をされても困りますよね。あたし石井って言います。3年3組の」 「3年3組?ということは確か私の担当クラ…

花うらら2

クラスは受験ムードに包まれピリピリとした空気になりつつあった。朝早く登校し遅くまで残る生徒が増えたが、浦田はほどほどに来てほどほどに帰るようになっていた。これまで浦田は、職員室へ教室の鍵を取りに行かなければならないくらい早くに登校していた…

クリスマス前に変な人に絡まれる話

賑やかな雑踏から扉一つ隔てて、レトロなメロディが流れる喫茶店。その落ち着いた雰囲気の中、テーブルはほぼ満室になっていた。肌寒い季節の夕刻18時すぎ、家族連れやカップルなどが談笑している姿がちらほらと見える。私はエビたっぷりグラタンを一つ注文…

鬼の荒療治

「ああ?何だって?聞こえねーよそんな小さい声じゃあ」 怒鳴るかのような声が辺りに響きわたった。地声が元々低くて大きい彼が声を張ると、空気は一瞬にして張り詰める。周囲の人が一斉にこちらを見いやるが、大事ではないとわかったのか再び各々話しはじめ…

女も度胸

女は愛嬌、って誰が言い出したんだろう。 そんなものあたしには無縁の言葉だ。何で面白くもないのに笑って媚を売ってご機嫌取りをしなければならないんだろう?無駄に神経を削って疲れるだけだ。それがイヤだからあたしは素直に生きる。仮にそれで距離を置か…

友達と天然は青春の華 第25回短編小説の集い「病」

「私、今度入院すると思うんだ」 開口一番に友達がとんだ爆弾発言をしたので、咲は一瞬脳の処理が追いつかず固まった。思わず出た言葉は「は?」だった。 時計は8時15分を指しており、教室には半分近くの生徒が既に集まっていた。友達の七海を見つけたので声…

花うらら

禁断の恋。 それは甘くてちょっとスパイシーな響き、だけどその一言で片付けられないほどの思いが詰まっている。まさか自分が経験するとは思いもしなかった。 その人の朝は早かった。学校の校門が開く午前7時、勤勉な性格なのかそんな時間から既に職員室にい…