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泡沫のユメ

どこからでも読める金太郎飴みたいな短編小説書いていきます

友達と天然は青春の華 第25回短編小説の集い「病」

 

「私、今度入院すると思うんだ」

 

開口一番に友達がとんだ爆弾発言をしたので、咲は一瞬脳の処理が追いつかず固まった。思わず出た言葉は「は?」だった。

時計は8時15分を指しており、教室には半分近くの生徒が既に集まっていた。友達の七海を見つけたので声をかけたらこれだ。咲の記憶によると七海は、入院するほどの重い病気にかかるどころか、むしろ小学校6年間及び中学校3年間風邪をひいたことがないと自慢していた。

 

「えっ急にどうしたの?何の冗談よ?」

「冗談じゃないんだよ。入院するって決まってはいないけど、病気は病気なの」

「え…ほん、とに?元気そうに見えるけど…」

「ほんとのほんとだよ。もしかしたら…咲ちゃんと一緒に卒業できないかもしれないくらいのね」

 

そう言って七海の目元が潤む。人を笑わせてばかりの七海の普段とは違う空気に、さっきまで笑っていた咲の顔が引きつっていく。

 

「何の病気?いつから?」

 

咲が質問を投げかけると、七海ははあ、とため息をついた。視線は斜め下を向いていてうかない表情のように見える。

 

「心臓の病気…かもしれない」

「心臓!?」

 

そう驚く咲の声はクラスメイトたちの話し声にかき消された。心臓の病気というと、全身に血液を送る機能が低下することから、命に危険が及ぶ可能性が高い。重い病気をすぐにイメージされるだろう、それを10代半ばの少女がなるとは誰も想像するまい。

 

「いつからかはっきりとはわからないんだけど、不整脈というか…心臓が一瞬変な感じになるんだ。後は身体が火照ったり、あんまり寝れなかったり、集中力が落ちたりするの。毎日症状が出るわけじゃないからまだいいんだけど」

 

淡々と話す友達をよそに、咲の表情はみるみる曇っていく。幸いその病気の症状は軽いようだが、いつ悪化するものかわからない。そもそも病気について詳しくない咲にとって、その症状は何が原因で何を意味するのか全くわからなかった。深刻な話題はとても繊細で、その症状は入院するほどのものなのか、なんて聞けるはずもない。傷つけないように精一杯言葉を選んで咲の口が開く。

 

「そう…なんだ。大変だと思うけど無理はしちゃダメだからね。私に手伝えることがあるかはわからないけど、あったら遠慮なく言ってよ」

「ありがとう。じゃあ、一つだけ。早速頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」

「うん、全然いいよ。なに?なんでも言って」 

 

一瞬不敵な笑みを浮かべ、なぜか握りこぶしを作る七海。

 

「うちの委員長をしばこうと思います」

「…ん?」

 

再度咲の思考回路がフリーズした。病気で入院する人からの頼み事というと、普通はお見舞いに来てほしいとか退院してからも仲良くしてね、といったことを頼むのではないだろうか。咲もそれを想像していたが、唐突に委員長が話題に上ったことに戸惑いを隠せない。

 

「ごめん七海、急すぎてちょっとついていけないわ。説明してくれる?」 

「あ、ごめんごめん。さっき心臓病で色々症状が出るって言ったよね?身体が火照るとか心臓がドキドキするとか。それが実は委員長が近くにいるときにしか出ないって最近気付いたんだ」

「……んん?」

 

話を聞きながら、咲の眉間の皺が深くなる。特定の人物の前でしか症状が出ない病気なんてこの世に存在しない。

 

「だからこの病気は委員長から移ったのよ!だって委員長がいないとき私飛んだり跳ねたりガンガンできるくらい元気だもん。まあ、家にいるときに委員長のこと憎いと思って寝れなくなったり色々集中できなくなったりするんだけど。だからあんたのせいで!という憎しみを込めて一発しばこうと思うわけですよ咲ちゃん」

「七海、それは…」

 

その話で咲の身体の強張りが取れた。と同時に七海の口数が一気に増える。今この教室にまだ委員長は来ていない。8時30分になり予鈴のベルが校内に響き渡るが、遅刻魔の彼は本鈴が鳴るか鳴らないかの時間帯にしか来ないのだ。

 

「心配した私がバカだったわ…」 

「許せないでしょ?よりによって9年間風邪ひいたことない私にそんな病気を移すなんて。だから委員長しばき隊を今ここに作ろうと思うの。もちろん隊長は私ね。あ!咲ちゃんに移ったら大変だね。ていうかどうやって移るのかな。咳?咳かな。とりあえず休み時間にマスク買ってくるよ。結構しんどいからねこれ」

「天然だもんね七海は」

「?なに急に?」 

「なんでもない。あー朝から疲れた~」

「というわけで、咲隊員、一緒に委員長しばきに行こう!」 

 

七海が咲の手をがっしりと掴んでそう話すと、咲は満面の笑みで親指を立てながら答えた。

 

「帰れ」

 

 

 

 

 

 

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短編小説の集い、というのべらっくすさんの企画に初参加しました!

novelcluster.hatenablog.jp

 

病といったら恋の病だね!キュン話を!癒しを!と思ったんですけど、どうしてこうなった。

どうやら私はコメディ入れないといけない病になってしまってるらしいです。ちくしょう、これが関西人の性か。

しかも書きたいものをザザーッと書いてしまうあまり主語とか補足説明が抜けやすいらしいです。これで伝わるかな…とドキドキしながらアップしました。見直しもするんですけど、脳で補完されながら読むからどうなんですかね。

はぁ~この2人みたいな友達をずっと眺めてたいっすわ~

 

それと、こちらの企画は 月1で出されるお題に沿って短編小説を書くというものなんですが、参加人数が減ってきていて、もしかしたら廃止するかもらしいのです…そんなことってあるか…

なので、是非是非たくさんの方に参加してもらって色々刺激もらって短編小説書きさんのネットワーク広げていきたいので(完全に欲望の塊)皆さんも執筆お願いしまっす!

 

P.S.(11/27)

リンク貼り間違えに気付きました…これが文章よく読まない早とちりさんの末路です…オーマイガー