好きなゲーム10選
こんにちは。
突然ですが私は趣味はなんですかと聞かれたら即答でゲームと答えるほど、ゲームやりすぎて目が疲れても腕が疲れてもゲームをするほど、ゲームが大好きなんです!
RPGやアクションが主に好きで好きで、何周もやったゲームもあります。
なにが、どこが、どんなゲームが好きなんだっけ?と急に振り返りたくなったのでここに書いておきます。
↓早速どうぞ!
▼1:ポケットモンスター銀
確か生まれて初めてプレイしたゲームがポケモンピンボールなんですが、本当に何周もプレイして遊んだのがこのポケモン銀です。
今でも好きなポケモンは?と聞かれると、この世代のポケモンたちが割と入ってくるし、BGMもずっと聴いてしまうし、寝る間も惜しんでずっと遊んでました。
図鑑を完成させるのは面倒くさがりなんでやってないんですが ぼっちだったからね
それ以外のことは大体やったのかな。
あのドット感もたまらなく好き!手持ちのポケモンのちっちゃい感じとか色味が良くて、今の3Dも大好きだけどやっぱドットは最高だなあとしみじみ思いますね。
本当に楽しい、私の青春です。
▼2:ゼルダの伝説
昔からポケモンで育ったのでゼル伝は通ってこなかったのですが、ブレスオブザワイルドのオープンワールドが面白そうでやってみたのと、つい先日神々のトライフォースをプレイしました。ゼル伝は今のところこの2作品をクリアし、ティアキンを現在進行形でプレイ中です。
まずブレワイについて。
ブレワイは本当に自由度が高くて、見渡した山も海も草原も全部行けるし、走ったり飛び上がって滑空もできるし馬にも乗れるし、ボムや武器や能力を使って工夫しながら謎を解き、敵と戦っていくのがもう楽しくて楽しくて。手がスティック操作で疲れるくらいずっとやってて、サブクエも全部やりたいと思ったら全然時間が足りなかったです。
ボス直前までずーっとやってて、ボス倒したら終わっちゃうからって1年くらい放置してようやくクリアしたって感じですね。大人になってからRPGは長くて用語が覚えられなくて中々できなくなってきたんですが、ブレワイはメインストーリー自体はシンプルでサブクエがたくさんある感じなので割と覚えられたのかもしれません。
神々のトライフォースは面白いという噂と既プレイの知人がいたためやってみたのですが、ヒントがあるのになくてめちゃくちゃ難しかった。
ここに行けば話が進むのに、そこに行くためにはアイテムが必要で、そのアイテムは目の前にあるのにどうやって取ればいいのかわからない。ヒント屋さんがあるが「アイテムをとれ」みたいなわかりきったヒントしかくれなくて……そのアイテムの取り方を教えてくれってんだ!
あっちこっち走り回って話かけまくったら色々強化されたりアイテムがもらえたりヒントがもらえたり、ブレワイのスーファミ版というか縮小版というか。自分が頑張って探検してなにかを得られる喜びがあって、スーファミという昔のゲームとはいえ侮れんなと思いました。絶対攻略見ずに全クリしてやる!と思ったものの知人にヒントをもらいまくりましたが、クリアしたときには達成感がとてつもなくあって、嬉しかったですね。またやりたいな。
マリオ、カービィ、ドンキーコング、リンク、ネス、色んなゲームタイトルの主人公たちを選んで戦う格闘ゲーム。
64とゲームキューブのスマブラをやり込んで、COM、兄弟、友達、友達の友達と戦い交流を深めた記憶があります。
ターゲットを壊せとか、特定の目標を達成するモードとかが色々あって、試行錯誤してそれを1つずつクリアしていくのが夢中になってました。もうずっとやってた。
アイスクライマーが好きでゲームキューブではずっと使ってたのに、Wiiではいなくなってしまって悲しくて、そうかと思えばスイッチで全員参戦したときの喜びたるや!
正直リンクとかロイとか剣士って剣を持っててリーチも長くてずるいと思ってました。ピカチュウ使いでもあるので、ピカは武器持ってないので素手でこいよ!とか思ってました(アイスクライマーはハンマー持ってるじゃんという突っ込みはなし)
▼4:逆転裁判
昔からミステリーが大好きだったんですよ。RPGは勧善懲悪とかボスを倒すっていう王道のストーリ―が多いから飽きちゃうこともあるけど、ミステリーは助手や主人公が犯人パターンがあるみたいに先の展開が読めなくて面白いから。
逆裁はコミカルであり正義とかを考えさせられもする裁判のゲームで、伏線が大いに散りばめられていてずっとドキドキワクワクできるゲームです。
誰が犯人でどういった犯行をしたのかがわからないから、続きが早く知りたい!とさくさく進めちゃうほど。
1~6のシリーズや外伝があって、私は4から始めたんですけど、4は色々賛否両論はある作品ではあるものの、4から始めた私にとっては逆裁にハマる始まりのゲームで、十分に楽しめるものでした。たぶん1から始めて2,3,4とプレイしたらどう思ってたかはわかりませんので、4から始めるのがいいかも。
みぬきちゃん好きだー!
▼5:テイルズオブエターニア
兄弟がやってて面白そうだなと思って自分でも買ってみたゲーム。
村に知らない女の子が空から落ちてきて、言語が違って会話ができないからその言語を理解できそうな友人に聞いてみようと旅をするRPG
4人パーティで精霊を召喚しつつ横スクロールで戦う2D戦闘システムと、精霊の組み合わせで新たな魔法が覚えられるクレーメルケイジのシステムが本当に大好き。同じシステムでまた作品作ってくれないかなあってくらい。
メルディの「フリーズランサー」と「グランドダッシャー」のボイスが好きだったし、ファラを操作して仲間を回復しつつ前線で戦うのが好きだった。ただ前線で戦うと周りが見えなくなって回復できないので私に回復役は向いてないと思った。
ストーリーも良いしBGMやSEもシステムも全部好き。
シンフォニアも面白いらしいからやってみたいなあ。
▼6:ニーアオートマタ
もう、これは、記憶を消してまたやりたいゲーム。
人類が作ったアンドロイドと異星人が作った機械生命体とが戦うアクションゲームで、人間と機械、命について考えさせられる作品。
主人公のアンドロイド(2B)を操作して異星人や機械生命体が占領している地球を奪い返すんだけど、2Bの立ち姿が造形美というか…所作が綺麗で、帯刀してるんだけど腰じゃなくて背中に浮かせて持ってて、抜刀して刃を振るう動きも本当に美しく感じちゃうんよね。荒廃した世界もまた綺麗でずっと見入ってしまう。
あとストーリーが、ストーリーもだし選択肢がもうずるいところがいくつかある。2Bと相棒の9Sの関係や会話もだし、サポートしてくれるオペレーターの6Oも好きだし…無感情なアンドロイドの後ろで私が慌てたり号泣したり戸惑ったりしていた。
チップのシステムも面白くて、近くのアイテムを自動で回収するとか時間経過で回復するとか便利な機能をカスタムしてつけることができるのも良かった。
5周くらいしたけどもう5周くらい遊びたい。
▼7:スプラトゥーン
2から始めました。アオリちゃん推しです。
友達がやってて面白いよーって言われたけど、FPSよくわからんしな…と思いつつやってみたら見事にハマった。正確には対人ゲームであるナワバリバトルやガチマッチは緊張感やプレッシャーであまり乗り気になれないけど、サーモンランっていう仲間(友達や野良の人とフォーマンセル)と協力してシャケ(COM)をしばくモードがめっちゃ面白い。
シャケがCOMってのが良くて、煽られることもなければ負けても自分が次頑張ればいい(相手が上手すぎてへこむことはない)し協力して倒すっていうのが楽しい。
3でもほぼほぼサーモンランやって、たまにフェスはすれど結局サーモンランに戻ってくるんよね。
2,3合わせて1000時間以上やってるくらい好き、もう永遠にサーモンランをしていたい。※ただしフデとリールガンが使用ブキになってるなら腱鞘炎になるのでやりません
▼8:十三騎兵防衛圏
何きっかけで知ったかは忘れたけれど、確かスイッチで面白いゲームないかなって探していたら、パッケージやゲーム画面の絵と雰囲気と色味がめちゃんこ素敵なゲームだな!?って良い印象を持ったのがきっかけだった気がする。
それで内容をみてみたら、街に突如やってきた巨大ロボットが何故なんのためにやってきて街を壊すのか、13人の主人公が各自の目線を通して真実を知っていく群像劇というもの。
私はミステリーとかこういう謎をとく!っていう先の読めない展開が好きなのと、謎な謎を呼んで少しずつ真実を知っていくのも好きだし、13人の主人公をそれぞれ操作して一つの真実に辿り着くっていうその…各自の思惑が知れるっていうのが大大大好きなんです。
例えばミステリーでいえば、ただ探偵目線で淡々と話が進められるよりも、「人を信じることができなくなり悲しみの中殺人を犯す犯人」「被害者と仲が良いのに容疑者にされる第一発見者」「実は犯人のことを一番に考えて気にかけていたのに声をかけようとした一歩手前で亡くなってしまった被害者」各自の目線で一つの事件が語られるみたいな…人それぞれの考え、気持ちにフォーカスした作品が好きすぎるんですよ。伝わるかなこれ。
話がそれましたがそんなこんなで13人の主人公全員が好きになりました。
謎解きだけじゃなくてバトルパートというのもあって、それもめちゃ楽しいんです。
13人のうち6人を選び、出陣させ、リアルタイムで攻めてくるロボットたちから街を防衛するシミュレーションバトルです。防衛ゲームが好きなのでこれも見事ハマりました。主人公に応じて遠距離が得意なタイプ、近距離が得意なタイプなど様々なので、バトルに有利な子を選出しつつ作戦だてて戦うのが楽しくて楽しくて。
こちらも記憶を消してまた1からやりたいゲームです。
▼9:大神
舞台は神話時代の日本。世界を闇に包んだヤマタノオロチを討伐すべく、大神アマテラスを操作し世界に光を取り戻すアクションゲーム。
筆や水彩で描かれた日本らしい桜や海などの風景が魅力的。
話を進めると、神の力「筆しらべ」で色んな能力を使うことができるんですけど、まるで自分が神になってこの能力を使ってるんじゃないか?と錯覚してしまったのは私だけでしょうか?厨二心がうずきました!
例えば当時Wiiで(プレステ2やスイッチでもできるようです)画面に「一」と描くと石を一刀両断できたり、枯れ木に○を描くと桜が咲かせるような、画面に描いた図形に応じて能力を使うことができます。それが楽しい!
神話時代の日本って少し親しみにくいと思うかもしれませんが、コメディぽくクスリと笑う場面もあり、真剣に戦う場面もあり、なにより主人公のアマテラスが可愛いし戦闘が爽快だし神になった気になれるので夢中で遊んでしまいます。
人や動物の悩みを解決したり喜ばせると、相手が幸せになって自分(大神)の力になるのが素敵なシステムだなと思います。こっちまで幸せになるし全力で皆が幸せになれるよう駆け回ってました。
神になりたい方はぜひとも遊んで頂きたい。
▼10:オーバークック
客のオーダー通りに料理するゲームです。
なんだそれ面白いのか?と思われそうですが、1~4人で協力して色んなメニューを頼んでくるお客のオーダーに効率良く応え、ノルマのスコアを目指します。
お肉を叩いて焼いて、トマトを切って、チーズバーガーにしたりレタスバーガーにしたり、お肉を焦がさないようにしたり、お皿に載せないと提供できなかったり、皿洗いしたり、作るのが遅いと客に怒られて減点されたり。ステージにも様々なギミックがあって、氷の上で滑ったりマグマに囲まれたりコンロが流れていったり。
どうすれば効率よく動けるのか話あって、お肉を焼いている間にレタスとトマトを切っておこうとか、これ作ってる間に次の料理の準備をしておこうとかを話し合う時間も楽しいし、頑張ってクリアできたときの達成感もまたひとしお。
進めていくごとに新しいメニューが追加されていき、これはなんだ?どの具材をどうするんだ?焼く?蒸す?オーブン?って困惑するのもまた楽しいです。
新作待ってます。アプデで新メニュー新ステージ追加も待ってます。
▼おまけ:chants of sannaar
最近やってみて面白かったゲームをちょっとご紹介します。
スイッチのダウンロード用ゲームで、謎解きアドベンチャーものです。
主人公が目を覚ますと見知らぬ世界?町?で、壁に書かれた文字も人が話す言葉も全く知らない未知の言語。絵やジェスチャーを見比べることによって、これは「はい」って意味だと仮定するとこれはこういう意味かな?って一つずつ紐解いていきます。そしてその世界の言語を理解して自分なりの辞書みたいなのが作られるんですが、ただ言語を理解するだけの謎解きじゃなくて、その先にある大きな謎が少しずつわかっていく。
なんでこの世界はこういう状況になっているのか、なんでここは通れないのか、モブっぽい人にも意味があって、謎が案外深いものになっているのがとても面白かった。風刺っぽさも感じました。
わからない言語を一つ一つ見比べ仮定していくのが数学っぽいなーとも思いました(とはいえ私は文系ですし、プレイするのに数学は関係ないですが)
▼最後に
あーなんか大好きなゲームの楽しい思い出を振り返ってるだけで幸せな気分になった!
10作品が意外とぽんぽんと出てすぐに埋まりました。感想もさくさく打てましたし。
わかりやすいようにゲームの画像やリンクを貼ろうかと迷ったのですが、なんやかんやでやめることにしました。申し訳ありません。
お手数ですが参考程度にみていただき、気になった場合は調べていただけると幸いです。
みんなで楽しいゲーム生活、しましょうね!
桃源郷記
鏡の向こうには、鬼の世界がある。
決して合わせ鏡にしてはいけないよ。
鬼に食べられてしまうからね。
私たちの住んでいる世界には、昔から鬼にまつわる恐ろしい言い伝えがあった。
鏡の向こうには鬼がうじゃうじゃいる世界があって、見つかれば玩具のように弄ばれて食べられてしまうというものだ。それが怖くて小さい頃は恐る恐る鏡を覗いていたが、鏡を普通に使っていれば何の害もないとわかると平凡なものだった。
鬼なんて言い伝え。
そう思って笑っていたこともあった。
鬼のいる世界(一般的には鬼ヶ島と呼ばれている。島というのは単に言いやすいだけであって、たぶん本当に島ではない…と思う)には、私たちの住む世界にはない未知なる物質でできたものがたくさん眠っている。私たちはその未知の物体をお宝と呼んでいた。お宝は金銭になるものもあれば、生活で役立つものなど様々であった。鬼がそのお宝のことをどう認識しているのかは全くの不明。鬼にとってもお宝なのか、あるいはその辺にあるガラクタなのか。鬼と意思疎通なんぞできないのだから、わからないのは当然ともいえる。
そのお宝を売ることで生計をたてているトレジャーハンターが存在するようだが、自分より巨大で獰猛である鬼に見つかれば私たちはなす術もなく食べられてしまう。危ない橋を渡ってお宝を得るよりは、普通の生活をしている方がはるかに安全だというのに、どうしてわざわざ茨の道を進むのだろう。最近までそうぼんやり考えていた。
いつからか、私たちの世界に飢えた鬼が迷い込んで人々に襲いかかる事件が増えていた。鬼がこちらの世界に一度きてしまえば、出口はあちらですお帰りくださいとはいかない。戦って勝つしかない。もちろん一般市民にそんな力はないので、何か対抗策を練ったり鬼の習性や生態を調べたり、時には戦うのが私ユメユの、いや私たちの仕事だった。
ほとんどの人は一生のうちに鬼に会うことはない。会うのは好奇心旺盛で鬼ヶ島に足を突っ込もうとする者、トレジャーハンター、そして私たち研究者ぐらいだ。鬼ヶ島へ行くには条件があるので、怖いもの見たさでその条件を満たそうとしなければそうそうお目にかかることはない。
かくいう私も、鬼を見たのは一度だけだ。研究所に入社して間もないころ、研究所で捕らえた鬼に対して実験する様子を見た。ついでにいうと急激に気分が悪くなって倒れてしまったのだが。つまり入社していなければ鬼を見ることもなかった。ああ、思い出しても気持ちが悪い。そんなんで研究者が務まるのか?って自分でも疑問だったけど、そのとき教えてくれた先輩が「僕も最初は同じだったよ。大丈夫、慣れるよ」って笑顔で言ってくれたので大丈夫だと信じている。慣れたくはないけれども。
鬼に対する実験はまだ刺激的なので新入りの私はほとんどしていないが、近々する予定らしい。鬼ヶ島に1回は行かないと色々イメージつきにくいよねって先輩も言っていた。この仕事につくと決めてから腹はくくっているつもりだが、もう一度ぎゅうぎゅうにくくらないといけないのかもしれない。
仕事は大体鬼の生態について勉強したり、推察したり、鬼の身体の一部を隅々まで調べてみたりといったものだ。主に鬼の弱点を探っている。研究者という職種自体は最近できたものなので、まだまだ鬼について知らないことも多いのだとか。
「ご飯食べたくない…」
私は研究者であるといってもまだ2か月ほどのひよっ子で、今は研修期間でもある。研修は3か月まであって、それまで座学や先輩にくっついて仕事の見学をしたり筋トレやランニングといった基礎体力作りなどをしている。
ようやく昼休みだというのに頭痛で中々身体が休まらない。
「ユメユ、しっかり食べないとお昼から頭まわらなくなるよ」
「鬼を見たときのこと考えたらお箸が進まないの」
「考えててもお腹は空かない?」
「ヒナセはタフすぎるんだよ!」
同期であり仲の良いヒナセはケタケタと笑った。今までご飯が食べられないことなんてなかったのに、この仕事をしだしてから…いや、鬼を見てからどうにも恐怖心がちらついてダメだった。加えて、午前中に鬼の皮膚を焼いたときのニオイが鼻から離れない。鬼の皮膚がいかに頑強であるかを知るとともに、どういう皮膚構成がされているのかを知るための研修だったが、身体の不調をきたす人は少なからず数人いた(もちろんそのうちの一人は私だ)
一方のヒナセはオンとオフの切替がちゃんとできているというか、食べながらグロテスクな映画を見ることができるくらいだ、既にある程度耐性はついているのだろう。
「まあ…あたしはこの仕事が生きがいみたいなもんだから」
ヒナセの瞳の色が少し陰りだす。
迷い込んだ鬼の圧倒的な力によって大切な人を失い、研究者を目指すという人が多い。ヒナセは復讐を胸に固く誓って研究所に入ったと以前言っていた。
私はというと「なんとなく」研究者になったと言うと大抵笑われるのであまり口に出さないようにしていた(すでに先輩たちにはひとしきり笑われた後だが)。
「1回外の空気吸ってきていい?」
「ん。行ってきなー」
この鼻にまとわりつくニオイを取り除くため、一旦席を立つ。同期がせっかく一緒にいてくれているというのに席を離れることに心が痛むが、あっけらかんとした表情で手を振る彼女へ素直に感謝の言葉を述べて外に出た。
「すー!はー!」
これでもかというくらい深呼吸をする。お昼を食べないことで午後の研修がいかに大変かを以前体験済みなので、何としても食べておきたい私は必死の深呼吸だ。部屋に引きこもってるくせにカロリーを消費するか?なんて声が聞こえてきそうだが、頭と神経を使うのに食事で補わなければ何で補うのだ。家に帰ってからなら遊ぶなり寝るなり気分転換する方法はいくらでもあるが、昼休みという限られた時間内では食べることぐらいしかできない。まあ、無理やり食事を詰め込んでリバースしたことも体験済みだが。
「すー!はー!」
ふと清涼感のある香りがしたなと思えば、近くに栽培しているらしいハーブを見つけた。解毒作用があるんだったかなんだかで話を聞いた気がするが、正直草なんてどれも一緒に見えて頭に入ってこなかったので名前は不明だ。おかげで鼻に居座っていたイヤなニオイがこのハーブの爽やかな香りに変わったのでとにかく結果オーライだった。
「写真とっとこ!テストに出たらマズイし、後でヒナセに聞こうっと」
ポケットから携帯を取り出し写真を撮ろうとして、何かが光を反射していることに気付く。目をこらすとハーブの後ろに隠れるようにガラスの破片が落ちていた。おそらくこの付近で窓でも割れたのだろう、一かけのガラス片しか残っていないところを見ると大方片付けられているようだった。ハーブに隠れて見つけにくくなっているので見落としたのかもしれないな。気分が良くなってきたお礼にそのガラス片を取ろうかと手を伸ばした。
そのとき、雷のように目を開けていられないほどの光が一瞬辺りを包んだ。ゴロゴロという音は聞こえないし、そもそも今日は晴天だ。雷なんて鳴るはずがない、一体何事だ?
恐る恐る目を開ける。
景色に特段変化はない。が、先ほどまで太陽の日差しにさらされていたというのに、今の一瞬で何かの影が自分にかかっていた。
背後に何かいる。
嫌な予感がして振り向くと、血走った眼と自分の身長をゆうに超す、鬼が、いた。
「っ、」
全身の毛が逆立つのを感じたが、声を出すことも動くこともできなかった。呼吸すらまともにできない。
約2,3メートルほどあるであろう鬼は身体を曲げて私の方へ顔を近づけ、にんまりと笑った。
前に鬼を見たと述べたが、それは”研究所内”で”対抗手段を持つ仲間”に囲まれながら”拘束された”ところを見たのであって、今の状況とは全くの別物だ。あの時とは私と鬼との立場が違う。
”絶対に合わせ鏡をするな”
子どもの頃から、研究者になってからも何千回も言われてきて聞き飽きた言葉だ。合わせ鏡をすることでどういう理論だか分からないが異世界への道が開くらしい。鏡は基本的に家庭に一つ設置することを許可されており、取り外しできないように、持ち歩きしないようにと規律で決められている。不意に合わせ鏡となって異世界へ通じないようにするためだ。仮に合わせ鏡になり異世界へ繋がってしまったとしても、必ず鬼が出てくるとは限らないが、安全性を確保するためには合わせ鏡は避けるのが無難だった。
それが、何故こうなったのか。
鏡なんてどこにもない。あったのはガラス片だし、ガラスなんて自分を映すどころか透けているので鏡の代用になろうはずがない。仮になったとしても、相対する鏡がない。
そもそも鬼は夜行性だ。こんな真昼間、どの鬼も眠っていて真横でどんなに騒いでも起きることはないと聞いたはず。こいつは眠るどころか瞳孔が開いていて、大きく闇がうずまいている瞳の中に、脂汗をだらだらと流している私の顔が映っていた。
眼前に広がる鬼の鋭い眼光、荒くなっていく呼吸、牙の横からからこぼれ落ちる涎。
私は本能的に補食されると悟った。
はてなブロガーに10の質問
はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」
久しぶりに戻ってきたら楽しそうなお題があったので、挑戦してみたいと思います!はてなブログを始めて5年(ご、5年もやってたのか…)とはいえ、こうやって振り返るほどの数は書いてないんですけど、いい機会なのでやっていくぞー!
ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?
ブログ名、泡沫のユメってなんか今考えると厨二っぽくて恥ずかしいんですけど…
小説って現実とはまた違った世界が見れるじゃないですか。ファンタジーやSFだけではなくて、リアルな描写であっても小説はやっぱり現実とは違う夢みたいなものだなあと思っていて。夢みたいな小説って考えたら、ふわふわしてるというか、夢って毎日違う内容だし、あっという間に終わってしまうイメージを持つと思うんです。私の書く小説も短編を集めたものだから、夢みたいな、泡みたいな、すぐ終わってしまうけれどずっと見ていたい夢のような小説を書いていきたいなあと思って泡沫のユメにしました。
ユメがカタカナなのはその方が文字のバランスが良く可愛いと思ったからです。
はてなブログを始めたきっかけは?
前々から自分で物語を作ることに憧れがあったんですよ。なので学生時代にブログで10行くらいのプチ小説や、たまに長文や詩などをひたすら書きまくってました。そしたら数年経って恥ずかしくなってブログ丸ごと消してしまって…後であれ読み直したい、消さなきゃ良かった!ってめちゃめちゃ後悔したんです。
だから次こそはどれだけ恥ずかしくてもできるだけ残そう!という決意で再び小説ブログを始めました。
そのときたまたまよく見ていたブログがはてなブログさんだったので、真似っこで同じブログを選びました。
自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?
うーん、花うららの続編の花うらら2ですかね。この話が一番最初に書いたもので、メインストーリーというか思い入れが深いので、やっぱり気に入っています。先生のことが好きな生徒の話でベタベタな筋書ではあるんですが、その葛藤が何とも言えない…
一応リンク貼っておきますね~
レビューもわりと好きなんですけど、昼顔とアンパンマンがなんだかんだ楽しかったし好きですね。
ブログを書きたくなるのはどんなとき?
ネタが浮かんだとき?かなあ。わりとリアルで起こった面白いこと、不思議なこと、友達から聞いた話、テレビやSNSで見聞きした話などがネタに使えそうだな!と思ったら、真実嘘織り交ぜて書くことが多いです。
レビューは、自分が好きすぎて考察も止まらなくて誰かに聞いてほしい!!ってぐらい熱い思いがあるときに一気に書き上げますね。
下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?
20弱ぐらいありました!笑
ほぼほぼ小説で、ネタが浮かんでばばっと書いてもオチや話の流れが決まらずくすぶっておりました。各キャラがメインになった話とか、登場人物の紹介とか、私が好きなものの紹介とか色々です。また折を見てぼちぼちと書いていきたいですね~
自分の記事を読み返すことはある?
あります。でもすごく恥ずかしくて、こんなオチはベタすぎるなって思って修正削除したくなります…なのでざざっと読みます。
何で読み返すのかというと、既出の話の続編を書こうとして、これのここどうだったっけ?と確認の意味であったり、単にこれもっかい読も!という好奇心であったりします。
好きなはてなブロガーは?
名前は伏せますが、日常を面白おかしく描写する方です。読んでいるとその文章に引き込まれて、構成や言葉の選び方が上手くて美しいんです。そしてそれを鼻にかけることもなく、コメディっぽく話されるので、本当に尊敬します。
はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?
”ありがとうございます”です。
おかげさまで自分が小説を書く機会を得ることができました。文章を書いている間は本当に楽しいです。これからもゆっくりとですが書いていきたいと思っているのでよろしくお願いします。
10年前は何してた?
たぶん前のブログを更新していたか、あるいは削除して勉強に集中していたころ…だと思います。
恋愛ものではなく、コメディや詩的なものが多かったですね。文章で遊んでいたような気もします。
思えばそのころのような小説を書くのも良いかもしれないな…
この10年を一言でまとめると?
”マイペース”かな?
最初は熱意のままに勢いがあってぽんぽん投稿してましたが、仕事で忙しくなり年1くらいのペースに減り、でも少しずつ続けている(と言っていいのか?)ので。
まあでも自分のペースが乱れちゃうと余計続きませんからね。今後もマイペースでいきたいです。
色々考えることができて楽しかった!ありがとうございましたー!
あの子の秘密
「ずるいわね~マラソン大会休むなんて」
寒空の下身体を鍛えるという名目で、この時期体育の時間にマラソンをするのはもはや恒例になっていた。そしてその努力の成果を見せろと言わんばかりに、マラソン大会は冬の一大イベントとして毎年行われている。わざわざ冷たい風の中を走るなんて、誰が望むの?と思いつつも、夏に汗だくになりながら走ることを考えたらどっちもどっちだった。
私はというと、白い息を吐きながら走るクラスメイトたちをよそにゴール付近で待機していた。こんな過酷な環境で2周だか3周だか走るのは全くもって意味がわからない。壁にもたれているとはいえ立ちっぱなしは疲れるな、と思いどこか座るところがないかと辺りを見回すと、同じクラスの色白男子が一人近くの段差に座っていたのを見つける。
「清水さんも休んでるじゃない。一緒だよ」
「私はお腹が痛いの。ずるじゃないわ」
「えー?さっきまで鼻歌口ずさんでなかった?」
ウソだあ、と笑う彼―沖は、柔らかい笑みを浮かべていた。沖は普段体育の授業はほとんど見学をしていることから日に焼けていない肌を持ち、話すときは穏やかで、いつもにこにこと笑っている。
こりゃ女子たちがイチコロになるはずだわ。今時こんな優男そうそういないだろう。クラスの内外、時には他校の子たちですら沖が好きと言っているのを聞いたくらいだ。私は親しみを込めて王子と呼んでいる(本当は親しみ半分、からかい半分だけど)
「ま、王子がサボりじゃないことぐらい皆わかってるわよ」
「そうかなあ?だといいんだけど」
汗をかき白い息を吐き出しながら走るクラスメイトのことを考えながら、穏やかな会話をしていることに若干の罪悪感を感じつつ、よく皆ズル休みしないなあ、と思った。全員がズル休みをしたらマラソン大会なんて成立しなくなってしまうんだろうけど、むしろ成立せずに今後一切中止してほしいものだ。
「でも、羨ましいよ。みんな思いっきり運動できて」
冗談を言い合いながら、隣の空気が少しだけ澱んだような気がした。
「まるで運動しないんじゃなくて、できないような言い方ね」
沖がじっとこちらを見て、それからゆっくりと微笑んだ。お返しに私も口角を上げる。わずかに沈黙が流れたが、どちらも言葉を発しようとはしなかった。
「…聞かないんだ?僕がいっつも体育の授業見学してる理由」
「聞いたら答えてくれるの?」
「どうだろうね」
全くずるい言い方をする。まあ、その答えはなんとなく検討がついているけれど。 答え合わせをしないことには、はっきりとはわからないもので。ここではぐらかすということはおそらく答える気はないのだろう。そして、体育を休んでいることに理由はあるのだろう。
知りたい、と思った。
普段彼はにこにこと微笑んでいるばかりで、あまり”我”を出そうとはしない。それがもしかすると今、垣間見えるように感じて胸が高ぶった。
面白そう。穏やかな少年の闇とは一体どんなものなのか。
「まあ…そんな大して面白くない話だから。それよりトップ集団がそろそろくるんじゃない?」
あっさりと話を終わらせて沖は言った。大会が始まってから時間にして約40分。足の早い人であればもうじき見えるころだろう。冷たく動きにくくなった体を温めるべく立ち上がった。
「残念。王子の秘密知りたかったのになー」
言いつつ伸びをして、ゴール地点に向かってゆっくりと歩きだす。マラソン大会を休む私は、代わりにゴールテープを持っておく仕事を任されたのだ。おそらくそれは沖もなのだろう、同じく私の数歩後ろをついてくる。
「清水さんだって秘密くらいあるでしょ」
「そりゃ乙女には秘密の1つや2つあるわよ」
「男にだって1つや2つあるよ」
「王子にはないと思ってたのに…王子は私たちに隠し事なんてしないと思ってたのに!」
「面白い人だなぁ」
先生にゴールテープをもらい、皆が走ってくるルートをぼんやりと見た。まだ人影は見えない。白い息が小さく消えていった。
「え!雪降ってる?」
寒いと思ったら頭上からちらちらと雪が降りそそぐ。雪や雨なら大会は中止になるはずだけど、あと少しで皆がゴールするのなら続行になるだろう。こんな中で立ち尽くすなんてごめんだ。早く建物内へ、せめて屋根のあるところに逃げたい。しかし悲しいかな、周囲は見晴らしが良く屋根になるものがほとんどなかった。
「ほんとだ」
「お腹痛くなってきたから帰る」
本当にお腹が(というか寒すぎて鼻とか耳が)痛くなってきた気がする。
「あ、待って、僕もオナカイタイ…」
「はい仮病」
「そっちこそ」
変に息の合った会話に思わず笑った。王子はどこまでいっても王子なんだから。
「あれ?ゴールテープねぇの?俺1位だよな?」
後ろから疑問の声が上がったので振り向くと、三ツ原は息を切らしながら立っていた。
あ、もう先頭集団きてたの?
雪に翻弄されて三ツ原にも気づかず、ゴールテープも間に合わず、何のためにここにいたんだ私たち。なんだか面白くて笑ってしまった。同じように沖も笑い出して、もう何が何だかわからなかった。今だったら何でも笑ってしまいそうだった。
「何がおかしーんだよお前ら?」
そうやってたずねるぽかんとした顔の三ツ原がまた面白くて、でもこうなった経緯を説明するのはちょっとめんどくさくて。
「ひーみつ!」
と言って私たちは逃げ出した。ここにいたらきっと笑いが止まらない。ゴールテープを持つという仕事もなくなったんだからここにいる理由もない。
残された三ツ原がぽつりとつぶやいた。
「変な奴ら……」
梅雨入りの夜の夢
自習室で、苦手な数学の問題集をみっちり解いたので、頭がまともに回らない気がする。糖分が欲しい。いつも鞄に忍ばせている一口チョコレートも、昨日で切らしてから買い足していないのを思い出した。
やりたくないオブやりたくない数学の勉強を頑張ったんだから、ご褒美としてアイスクリームでも買おうか。ジュースでもいいし、なんだったら揚げ物にしちゃう?と色々考えるだけでも少しだけ足取りが軽くなった。
さて、帰りにコンビニで何を買おうかな、と迷いつつ自習室を出た矢先、こちら側に向かって歩いている人影が見えた。勉強で疲れた頭がその人物を認識するのに数秒かかる。大きくて中肉中背のシルエット。姿勢。歩き方。その人は私が恋焦がれている人――立花先生だ。立花先生は私のクラスの担任でもなく、担当の授業を受けたこともない、ほとんど関わりのない先生だった。そんな先生を好きになった経緯は省略するとして、彼にはパートナーがいるので、そして私たちは教師と生徒という関係なので、焦がれる思いは無理やり胸の奥に押し込んでいた。封じていた思いがまた蘇らないようここ最近は避けていたので、隠れる場所はないかと辺りを見回すが、なぜか足が言うことを聞かなかった。
「こんばんは」
「…こ、こんばんは」
ぎこちない挨拶をして、軽く頭を下げる。いつものように穏やかな声を聞いて、自然と温かい気持ちになった。さようなら、と言おうとしたが寸前で飲み込む。代わりにはあと息を吐いて、体中の強張りがほぐれたかと思われたそのとき、すれ違った彼がくるりと振り返った。
「そろそろ閉まりますよ?早く帰らないと」
時間的には各部屋の戸締りがされ、消灯されていくときだ。いつも警備員さんが見回りにきており、間もなく自習室にも鍵がかけられるほど遅い時間になっていた。私の胃袋が、待ちかねて音をたてそうだった。
「そうですよね、すぐに帰ります」
鞄を持ち直して歩き出すと、先生がにこりと微笑んだ。
「浦田さんは電車ですか?」
半身だけ振り返っていた先生が、完全に体ごとこちらを向いた。私の動向をじっと見ながら待っている。…もしかしてこれは。
一緒に帰る流れ?
ごくり、と唾を飲み込む。私の心臓は飛び跳ねそうなくらい喜んだ。が、理性がすぐその喜びを押し付ける。好意を抱かれていると思うなよ、たまたま帰り道が一緒なだけだろう、と。思う分には自由じゃないかと本能は反抗するが、最終的には理性が勝った。
「そう、です」
思いを断ち切るように早足でロッカーへ向かう。さっさと一人で帰ってしまった方が後々楽だ。一緒に帰ろうものなら、きっと何かを期待してしまう。そして勝手にガッカリするのだ。今まで何度も何度も、期待と落胆を繰り返してきたんだ、もうこりごり。
「おや、急いでます…?」
早足だったことに気付いた先生が、歩みを速めることなく後ろから声をかけてきた。どこか落ち込んでいるように聞こえたのは、私の思い込みだろうか。嘘をつこうか正直に言おうかと悩んで、先生には正直でいたいと思い、とっさに返答してしまった。
「……い、いえ」
「そうですか、良かった。では途中までご一緒しましょう。さすがに夏とはいえもう暗いですからね」
…良かった……?
良かったってなに?
一緒に帰りたかったっていう意味?
勘違いしてしまいそうになる。
……ずるい。
そんな言い方をされて断れるわけがないじゃないか。…結局、一緒に帰ることになってしまった。そもそもさっき嘘をついて「はいそうです急いでますではさようなら」と帰るべきだったのに、変に見栄を張ってしまうなんて。
でもこうなっては仕方ない。駅に着いたらさっとお別れしなければ。決意を固めた私は、諦めて歩くペースを合わせた。いや、正しくは合わせてくれた。無意識のうちにゆっくりと歩いていたのを、先生は文句も言わずに同じくゆっくりと歩いてくれていた。
ちらり、と見上げるといつもならあり得ないくらい近くに先生はいた。周りを見ると同じ学校の人はおらず、仕事終わりらしきスーツ姿の人がぽつぽつといる程度だった。
これって、これって!もしかして2人っきりでは!!!?
私の欲望が一瞬で噴火しそうになったが、力強い理性がそれをまたも押し留めた。今なら、きっと、告白しても野次馬に聞かれることなく伝えることができる。そんなバカな考えが頭をよぎった。
だ!か!ら!諦めろ私!今のシチュエーションは夢!駅に着いたら覚める夢だ!こんなことぐらいで浮かれあがってバカか!バカだ!
考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
「先生のことが、好きです…」
こんなことを言ったら、先生はどういう反応をするんだろう。困る?喜ぶ?誤魔化す?怒る?諭す?でももう、先生には奥さんとお子さんがいる。私にはその間に割り入って先生一家をめちゃくちゃにすることなんてできない。わかっている。わかっているとも。こんなやましいことを考えているなんて先生はつゆ知らず、何気ない世間話をずっと私に投げかけてくれている。私は先生の横顔をぼんやりと見ながら、適当な返事しかできなかった。
「順調ですか、お勉強は」
「はい、まあ」
「あれ?ここにコンビニなんてありました?新しくできたのかな」
「そうですね…」
せっかくの会話ですら頭に入ってこないのは、糖分が足りてないわけでも勉強のしすぎでもない。動かない頭の中でぐるぐると考えているのは答えのないものだった。考えても仕方のないこと。それでも考えてしまうのは、隣にいる人のせいだ。
欲望を閉じ込めていた理性が軋みだしていた。
先生。
先生は私のことをどう思っていますか?
私に接するときの態度は、他の子たちと違う?同じ?
私の気持ちに気付いてます?
奥さんとの仲は、今もいいの?
他に好きな人が、できたりしないの?
私に少しの可能性もない?
先生。
先生は、
悪魔のような考えへと移行していってることを、今は認識すらできなかった。言うとしたら他の誰も聞いていない今がチャンスだ。もしかしたら、これが最初で最後のチャンスになるかもしれない。学校にいれば誰が聞いて、見ているかわからない。帰り道だってまた一緒になれるとは限らない。今しか、ない。
謎の焦りが私を突き動かしていた。なんでこんなに焦っているんだろう?わからない。とにかくこの状態が続くのは駅までの道のり、たった数分しかない。それまでに行動を起こさなければ。早く。
冷や汗が流れた。胸の痛みが強まるのを感じながら、やけにうるさい鼓動を無視して、唇を湿らせて、ついに私は
「せん、」
「あ!すみません、僕はこっち方向の電車なのでここで。勉強、頑張ってくださいね」
え。待って。
呆然となっている私をよそに、先生はぺこりとお辞儀をして珍しく足早に去っていく。気付けばいつの間にか駅に着いており、遠くで電車がきたような音がした。おそらく先生が乗る方向の電車が来たのだろう。改札の外で、先生が小さくなっていくのをただただ眺めていた。
私は私の中の悪魔をようやく認識して恥ずかしくなった。
何をやってるんだ私は。受験勉強に励まないといけないのに。今こんなことしてる場合じゃないのに。受験が終わったとしても、私には諦めるしかないというのに。誰も幸せになれない未来を前に、今更何を期待してるんだろう。
怖かった。悪魔がしでかそうとしたことはただならないことだ。今までの関係が壊れかねないことだ。良かったんだ、これで。先生から大切なものを奪うわけにはいかないから、これで良かったんだよ。バカな夢を少しでも見させてもらったんだって笑い話にしよう。友達の石井に話したら、たぶん呆れながら笑ってくれるだろうから。
ぐう、とお腹の虫が鳴いた。コンビニに行き忘れたことを思い出して、余計に空腹感が強まる。電車の発車音らしきものが聞こえた。全身にどっと疲れが出てきて、もうなにも考える気にもなれずに呟いた。
「お腹、すいたな…」